北海道新聞夕刊特集(中)

12月21日夕刊の特集(中)では捏造発覚後に明確に中期、前期となる遺跡になかなか行き当たらないという内容で、『出ない答え、少ない年代特定の試料』とタイトルが付けられ、長野県竹佐中原遺跡の石器写真が掲載されている。
「2002年に発掘された長崎県平戸市の入口遺跡の石器は「十万年前」「自然に割れた石」と見解が分かれる」とし、2001年に札幌学院大学の鶴丸教授らの発掘し「大量の石器が出たルべの沢遺跡も古そうだ」とするが、年代特定のための「炭化物を得ようとしたが見つかっていない」とする。編集委員氏は古そうだが年代特定試料が見つからないという見解しか紹介しない。




2001年調査の長野県飯田市の竹佐中原遺跡も炭化物がなく年代が特定できないが注目を集めていると紹介し、調査にあたり『遺跡調査指導委員会』を発足させ発掘状況を報告し公開したり、石器出土状況を克明に撮影して疑惑に配慮したと紹介している。今年の調査では376点の剥片石器などが出たが大半がホルンフェルス製。黒曜石製の後期旧石器と「比べ「成り行きまかせ」の技法の゛古さ゛を思わせる」という。ATなどの層位や石器の古さから同センター調査部長は「後期旧石器時代よりさかのぼる」と慎重であり「中期」と言い切れない微妙な位置付けだが、それなりに貴重な遺跡だろう、ただそう古くない可能性もある、と編集委員氏は総括。「竹佐中原遺跡は道路工事に先立って緊急発掘された成果。しかし、こうした偶然頼みでは、研究は進まない」とし、開発に伴う発掘で五千カ所の旧石器遺跡が調査された世界有数の資料を持つ一方で、十分な研究が行われなかった遺跡として、愛知県加生沢遺跡、大分県丹生遺跡などをあげる。加生沢は「約十万年前とされる赤色土壌層から大小の石器が出た」が白石浩之教授は「年代は確定せず、石器かどうかも定まっていな
いが、同種のものなど比較対象があれば解明が進むだろう」と話す、と紹介する。「丹生は二十万年前という見方もある」とし、「こうした古い石器の横断的な再検証も課題だろう」と編集委員氏締めくくる。

さて捏造発覚前、埼玉県秩父市などの『前期旧石器遺跡』にも記事にある長野県のような委員会があり、調査時に委員が現地を実見してお墨付きが出された。事件発覚後、石器の検証と検証発掘により、遺物は捏造、遺構は事実誤認だったと発表された。こうしたことに同紙は触れない。石器のインプリント(ロームに残る石器の痕跡)を克明に記録する写真撮影は捏造防止には有効なことが捏造遺跡の検証発掘で確認され(山形県袖原など)、これがすぐに実践された訳だ。中期旧石器にさかのぼる可能性がある遺跡では今後もこうしたタフォノミーを意識した調査が必要なのだろう。

ルベの沢遺跡と同じ下川町内のモサンル遺跡で同様の石器が縄文草創期平行期の石器群と一緒に見つかっていることには記事では一切触れていない。丹生や加生沢では積極評価派と否定派の両方をもっと丁寧に紹介すべきだろう。やはり取材不足。
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by north-archaeo | 2006-01-02 01:21 | 捏造事件