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サントリー美術館で開催されていた鳥獣戯画展が昨日で終了した。上京した時に行ってみた。六本木ミッドタウンの中という美術館のロケーションもよかった。2フロアーで混んでいるけどまあまあゆったり観れた。鳥獣戯画を間近で見て甲巻の筆致のあまりの見事さにうなってしまった。筆の強弱、線の勢い、迷いが無くすばらしかった。また関連作品の展示も鳥獣戯画を理解する上でとても良かった。

そしてさすが私立美術館と驚いたのが、「鳥獣戯画がやってきた!」 プレミアム内覧会という仕掛けである。
「じっくり作品と向き合いたい」と強く思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで・・・150名様限定(3時間)でご覧いただけるプレミアム内覧会をご用意致しました」という案内が会場に貼りだされていた。プレミアム感たっぷりの企画。
   日時: 12月11日(火) 13:00~16:00、
              および17:00~20:00の2回
   料金: お1人様 5,000円
   特典: ・図録1冊プレゼント
   ・学芸員によるレクチャー付(1部/13:30~、
              2部/17:30~、各回30分程度)
   ・ワンドリンクサービス(6階ホールにて)
   ・会員制のメンバーズサロンを当日は特別にご利用いただけます。

なるほど平日の午後という比較的空いている時間帯と夜間、150名でたっぷりゆっくり。図録が2300円であるから実質2700円。ワンドリンクに学芸員のレクチャー付。お徳なこと間違いない。こうしたプレミアム企画、さすが企業立だと感心。
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by north-archaeo | 2007-12-17 15:39 | 博物館
西東京市にある下野谷遺跡第18次調査の報告書を東京都埋蔵文化財センターから送っていただいた。いつもセンターから報告書を送っていただき感謝している。旧石器が出ていたのでパラパラと読んでみたがどうもおかしい。
本文(25ページ)では、7つの文化層に分かれるとあり、第1~4文化層は「1枚ないしは2枚の文化層に収斂する可能性がある」とされている。どう収斂されるか文化層分けの基準について記載はない。個別のユニットの記載を読むと「Ⅳ層上部に相当する」などと書かれている。
第1文化層(第Ⅳ①層)  5号ユニット・12号ユニット
第2文化層(第Ⅳ①層~第Ⅳ②層)  1号ユニット・14号ユニット
第3文化層(第Ⅳ②層上半部) 2号ユニット・4号ユニット
第4文化層(第Ⅳ②層下半部) 3号ユニット・10号ユニット
第5文化層(第Ⅴ層~第Ⅵ層) 13号ユニット
第6文化層(第Ⅵ層下部=漸移層相当) 6号ユニット・7号ユニット・11号ユニット
第7文化層(第Ⅸ層)8号ユニット・9号ユニット

ところが、第8図~11図(1/250)には以下のように層位別ドットマップが示されユニットが分けられている。
ユニット分布図(Ⅳ層)(第8図)には1号・2号・5号・12号ユニット
ユニット分布図(Ⅳ~Ⅴ層)(第9図)には3号・4号・6号・10号・14号ユニット
ユニット分布図(Ⅵ層)(第10図)には7号・8号・9号ユニット
ユニット分布図(Ⅶ層)(第11図)には11号・13号ユニット

つまりⅣ層とされた第8図には第1文化層全部と第2文化層のうち1ユニットそして第3文化層から1ユニットが載っている。Ⅳ~Ⅴ層とされた第9図には第2文化層から1ユニット、第3文化層から1ユニット、第4文化層全部、第6文化層から1ユニットが選ばれている。Ⅵ層とされた第10図には第6文化層から1ユニット、第7文化層が全部(えっ?第7文化層はⅨ層では???)。Ⅶ層とされた第11図には第6文化層から1ユニットと第5文化層の1ユニットが選ばれている。

この時点で何が何だか分からなくなってきたが、層が薄くて文化層分けの難しいⅣ層を除いて、Ⅴ層以下出土のユニットについて26ページ以降の各ユニットの垂直分布と層位の図(1/40)を見てみると、6号ユニットは礫9点石器1点でⅥ層下部に貼りつくように出土しているのにⅣ~Ⅴ層分布図に載っている。8号ユニットは礫群でⅨ層中位なのになぜか分布図ではⅦ層に。9号ユニットはⅦ層下面に貼りつくように出土しているのに何故かⅥ層分布図に。11号ユニットはⅦ層分布図に載っているが、礫群がありⅥ層のど真ん中にしか見えない。13号ユニットはⅤ層出土と判読できるが何故かⅦ層分布図に載っている。
もう何が何だか分からないのだ。

ユニット別の記載を読むと上でユニット別分布図から判読したのと概ね同じように書いてある。つまり第8図~11図はどうも文化層が混乱したまま制作し掲載してしまったようである。ちょっと考えられないミスである。誰も気付かなかったのだろうか?どんな整理作業だったのか、ちょっと考えてしまった報告書だった。
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by north-archaeo | 2007-12-10 20:18 | 旧石器
かながわ考古財団が今年調査した津久井城跡(第12回石器文化研究交流会 発表要旨 7~10ページ)の旧石器資料を野庭整理室で見学した。津久井城跡(相模原市)は神奈川の県北にあり、相模川と支流の串川に挟まれた城山の東端に位置する。山梨にも多摩丘陵にも近い。串川は山梨へと抜けるルートになるようだ。B1~B4の資料が出土しているのだが、B4の石斧関連資料が面白かった。

台形様石器は黒曜石製、凝灰岩製のものがあり、局部磨製石斧が何本も出ている。素材縁辺を残置して両側縁を成型した小型のへら状石器もある(第4図下段左端、とても薄いので精製の台形様石器ではないか。もう1点ペン先状を呈するものがある。どちらも安山岩製)。ナイフ形石器もある(報告者の畠中氏はB3相当ではないかと)。整理作業が始まったばかりでB3,B4の資料区分はこれからのようだった。凝灰岩の打面転移剥片剥離、剥片素材石核などが主体である。武蔵野台地の遺跡でよく見かける黒色粘板岩(頁岩?)製の剥片類もあり、水晶製石器もある。石材論からも面白そうだ。

B4相当で石斧素材と思われるが資料が出土している。石斧素材を取ったと思われる30cmを超える凝灰岩製石核がある。またホルンフェルス製の大形礫を3分割して板状の素材にし、たぶん石斧を製作しようとしたのだろう、一辺の両面で扇形剥片を遺跡内で取っている(チョッピング・トゥールとしか言いようが無いが)。同様の板状凝灰岩素材は、部厚すぎたのか、途中で製作を止めている。製作を続ければ、かなり大形の石斧ができただろう。完成品の石斧には大形品はない。非常に薄手の石斧が主で、厚手のものはリダクションがかなり進行した状態(上記文献第4図下段左から2点目)である。

凝灰岩製の剥片も大量に製作されており、石斧資料もやや軟質の凝灰岩であり、接合資料も多そうで整理はなかなかたいへんだろう。完成品の石斧と未成品や石斧製作剥片がどんな分布をしているのか、興味深い。整理作業の進展が楽しみであり、神奈川県内では最も良好な石斧資料であることは間違いない。最後になるが、担当の畠中さん、本当にありがとうございました。すごくいい資料です、整理作業頑張ってください!
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by north-archaeo | 2007-12-05 13:10 | 旧石器
京都橘大学の金武 創氏による「埋蔵文化財保護行政の規範的検討」と題した研究発表が日本文化政策学会分科会3「文化政策と法・制度」というセッションで行われた。金武氏はこれまでも「文化財政策の財政問題:社会評価アプローチと公共選択アプローチ」(文化経済学第4巻第4号)、「文化遺産観光のストックとフロー 三内丸山遺跡を事例として」(京都橘大学研究紀要 第33号)など埋蔵文化財関連の論文を著しているそうだ(未読、勉強不足と反省)。行財政改革の流れのなかで遺跡発掘への市場原理導入が進められつつある中で、「第一に埋蔵文化財保護の社会的便益を真剣に吟味」(配布資料)すべきであり、「文化政策における消費者選択重視の視点に注目」(同)したいと説く。

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by north-archaeo | 2007-12-04 19:49 | 考古学
昨日12月2日、東大本郷キャンパスで日本文化政策学会2日目プログラム「博物館法改正を考える」という公開ラウンドテーブルが開催された。法改正に関わる文科省の官僚や委員も出席し、改正の場でどんな議論がなされているのかも含めて語られ、とても有意義だった。このブログで紹介しようと思っていたが、速記録を公開された方がいるので、詳細はそちらを参照されたい。やくぺん先生のうわの空

学芸員養成課程、博物館実習、登録博物館の問題、国際水準へのキャッチアップ、学芸員の資質、地域社会と博物館の連携などなど多くの話題が出た。とてもとても2時間半で議論できるものではなかったが、興味深い議論となった。
学芸員資格は大学院で、という答申案については大学側の強力な圧力でどうやら撤回されそうで、学部の学芸員課程科目の増設という議論になっているそうだ。修士課程で学芸員資格をというのは、大学の経営を考えなければ、とても良い制度と思ったのだが、そういう方向には動きそうにないらしい。文化政策学会なので指定管理者制度と併せての議論になるのかと予想していたが、そうした議論にはならなかった。ボクが気にしている「学芸員の下流化」については金山先生が触れていた。指定管理者制度導入で低賃金・劣悪労働・将来保障なしという学芸員の下流化が進むのではないかと危惧している。若者は学芸員に希望を持てなくなる。
幸い、ねじれ国会のせいで他の重要法案も成立せず、緊急案件でない博物館法改正案はまだまだ先らしい。様々な議論が尽くされることが望まれるが、市民不在での改正に不安を述べていた先生がいたことがとても印象的だった。
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by north-archaeo | 2007-12-03 20:32 | 博物館