カテゴリ:旧石器( 66 )

考古遺物の実測はなかなかに時間がかかる。特に石器は実測図が描けるようになるまでかなりのトレーニング期間を要する。これは図自体のとり方に習熟する必要があることと、石器の製作技術や剥離面の観察ができるようになるまでリングなどが描けないこと、この二つが理由だろう。埋蔵文化財センターなどでは一年中実測を専属でやる写図工さんがいる。一日1点の石器実測が出来れば、年間で一人200点以上は実測できるわけだ。こうした写図工さんが何人もいるのだから羨ましい。

大学で旧石器の報告書を出そうとすると、学生は実測が出来るようになるまで1~2年掛かってしまい、やっと実測が出来るようになった頃には卒業してしまう。また1日1枚ペースでは描けない。学生には他にもやるべきことが多いから。

石器実測で一番時間がかかるのは、外形線と稜線の実測だ。リングやフィッシャーはフリーハンドで描くのでそれほど時間を要しない。従来から写真をトレースするという写真実測の手法が利用されてきた。しかし撮影距離が近いと石器周縁部での誤差が大きくなるため、正確に実測するためには望遠レンズで距離を離して写真撮影しなければならない。

デジタルカメラで撮影すれば、パソコン画面でイラストレーターなどのソフトを用いてトレースできる。画面上で実物の数倍に拡大してトレースできるので、小さい石器なら従来の方法よりも精確かもしれない。マウスではうまくトレースできないが、パレットツールを使えば、操作性も問題ない。外形線、稜線をこうしてトレースし、あとは別レイヤーでリング、フィッシャーを描き込めばよい。線の太さを指定してやればいいから、ロットリングでのトレースも必要ないかもしれない。
プリンタで打ち出した実測図が出版に使えるレベルかは不明だが、試してみる価値はあるだろう。こうした実測を既に実践している自治体もあり、近く視察に行くつもりだ。

まあフルオートで実測できるわけではないから時間を短縮するだけだが、3次元デジタイザを用いても結局どこに線を引くかは実測者が判断しなくてはならないので、同じだろう。

さあて、学生さんたちは興味を持って取り組んでくれるかなあ。
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by north-archaeo | 2005-03-26 11:02 | 旧石器
S幌大学のK村先生の書いた『北の黒曜石の道』は新泉社の「遺跡を学ぶ」シリーズの1冊である。一般向けに書かれているが、内容は示唆に富み面白かった。白滝でT間地点の発掘を継続しているK村先生ならではだ。1995年の論文「黒曜石・ヒト・技術」をベースにして白滝の黒曜石原産地近傍での人間集団の場の機能について説明し、山頂部の採石場である切り出し基地、山腹の第一次加工場所と中継地、湧別川流域の高台のムラという自説を分かりやすく展開している。A屋型彫器の頁岩嗜好性と流通ネットワークについても数値を挙げて説明していて興味深い。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4787705326/ref%3Dnosim/hakarublog-22/249-4203032-0282704#product-details

原産地地帯の遺跡群の構造や北海道全域の石材交換ネットワークについて学生には多くの示唆と刺激を受ける一冊だろう。


出土黒曜石については蛍光X線分析などで、出土石器のいくつかを分析し産地同定してきた。しかし静岡のM氏の精力的な研究で、本州では出土石器全点の産地分析を行い、大きな成果をあげている。僕もこの出土黒曜石全点産地分析をある遺跡で試してみようかなあ、と考え、今、分析屋さんと打ち合わせしている。この方法はこれからの黒曜石原産地分析の主流になると思われるやり方で、注目されている。http://www.paleolabo.jp/sannchi.html
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by north-archaeo | 2005-03-12 19:12 | 旧石器
O広市の大正3遺跡出土の爪形紋土器のAMSによる年代測定値が14500年と公表されたとH海道新聞朝刊に載っていた。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20050311&j=0031&k=200503112856
縄文時代草創期の土器であることが確定したわけである。
調査は一昨年2003年で現在報告書作成中のはずである。出土したときにも話題となっていたがC14年代もハッキリしたわけだ。
http://www.pref.hokkaido.jp/kseikatu/ks-bsbsk/joumon/remains/11.html
http://www.tokachi.co.jp/kachi/jour/03iseki/1.html

発掘当時、石器の集中部の下から土器が出てきて、この土器を見るまでその遺跡の時期が草創期であるとは、調査担当者も思っていなかったようだ。北海道でこの時期の土器は初めてであり、細石刃の時期からこの土器の時代へどう変遷していったのかは不明である。まだ見つかっていない数段階の遺物群がありそうで、旧石器から縄文への変遷が明らかになったわけではない。しかし本州で多く見つかっている爪形紋土器が十勝で見つかった意義は大きい。道南・道央での今後の発見も期待される。

共伴する石器群も注目されている。半月形石器、多数の彫刻刀形石器、小型の槍先。本州のどの遺跡資料に近似するのか、大陸のどの文化と似ているのか、比較検討が進められているのだろう。

草創期の遺物は礫層のすぐ上の層で検出された。当時は小河川に面した川原で、そこに一時的に滞在し火をたいて(焼土がある)、土器を残し、石器を製作した場所だ。河川の浸食で削られてもおかしくないような場所に遺物は遺されていた。

北海道はまだまだ驚くような遺跡が、眠っている。
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by north-archaeo | 2005-03-11 08:40 | 旧石器
T京にいる卒業生からメールが来た。やはり花粉症でやられているとのこと。今年は酷いと聞く。H海道は幸いスギはないし、他の花粉もまだ飛散しない。今朝の雪で路面はまた真っ白にもどってしまった。

東京を離れてもう12年になる。早いような、随分経ったような。すっかりS幌が好きになって、冬道の運転もそれほど怖くはなくなった。

正確な情報ではないが、旧石器時代の関東地方は現在のS幌ぐらいの年平均気温だった、と言われている。旧石器時代のH海道日本海側は現在のようには多雪地帯ではない。旧石器時代には寒冷化による海水面の低下で、暖流の流れ込まない日本海は淡水化し、日本海側地方にはそれほど雪は降らなかった。

けれど、旧石器時代の寒さを体感しながら、旧石器時代のことを想像するのは楽しいだ。旧石器時代人も春は待ち遠しかったことだろう。欠乏した石材も補給できるし、植物も得られる。狩猟にはどの季節が最適だったのだろう?いろいろな考えも浮かぶ。

残り少ない寒さを、旧石器人を思いながら愉しみたい。
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by north-archaeo | 2005-03-09 20:50 | 旧石器
amazonから本が届いた。洋書は注文していて忘れた頃に届く。Survival by Hunting :Prehistoric Human Predators and Animal Preyという本で
Frison effctで有名なフリソンが書いた本だ。
タイトルから分かるように先史時代の狩猟者、特に北米大陸の哺乳動物(バイソン、ロッキーマウンテンシープ、シカ類、熊)などの狩猟について書かれている。動物別に書かれていることが面白い。時間がないからゆっくり読めないのが残念。読みたい本がどんどん溜まってしまっている。

バーナード編集の Hunter-Gatherers in History , Archaeology, and
Anthropogy もまだ読めずに積まれたままだ。昨年出たばかりの本で早く読みたい。
スター・カー遺跡の再評価とその研究テーマのトレンドを分析している論文なんか面白そうなのだけど、時間ないなあ。研究者の国別に論文が載っているのは、研究者の所属する文化の認識論的問題を含んでいると言いたいんだろうけど、読まなきゃ分からない。

それより特色GPの報告書読まなきゃなあ。

そうだ!ゴスペルの先生に後期の講義時間の電話しなきゃ! 即興演技の先生の返事はまだこないなあ。
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by north-archaeo | 2005-03-02 17:42 | 旧石器
先日埋蔵文化財センターのN氏が大学にきた時に、白滝村での調査で台形様石器が出土していることを聞き、実測図も見せてもらった。すごい!本州のものと全く遜色ない台形様石器3点。まとまって出土したという。これまで加工の少ない北海道型ともいうべき「類台形様石器」ばかり出土していたので、発掘調査で確認されたのは初めてだろう。報告されれば話題になるだろう。時間を見つけて観に行かなくては。
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by north-archaeo | 2005-02-28 11:56 | 旧石器