カテゴリ:大学教育( 47 )

 指定管理者制度の博物館への導入について、このページで不安材料についてを中心に記してきた。しかし私自身は「革新と創造」を掲げる私立大学にいるので、すべてのことに工夫の連続で、公営施設のスピード感のなさやサービス意識の不足を実感することも多い。
 genjin氏からのコメントに答える意味でも、また指定管理者制度への否定的見解ばかりでは進歩がないので、民間活力の導入という点から思いついたことなどを書いておきたい。
 まず、博物館の開館時間である。なぜ5時に閉まるのか。来館者が来ないから閉めるのか、5時に閉めるから来ないのか。大半の銀行が3時に閉まるのを見ていて、経営者の感覚を疑っているのは私だけだろうか。都市部にある博物館・美術館はせめて7~8時までは開けていて欲しい。仕事の後でもちょっと寄ることが出来る、そんな美術館であって欲しい。勤務のシフト制を導入すればいいだけだろう。
 都市部の博物館・美術館なら結婚式やパーティ会場として貸し出すことも考えてほしい。美術館での夜のパーティなど、ホテルの味気ない宴会場よりずっと良いだろう。ファッションショーの会場に貸し出してもいい。
 指定管理者制度を導入するなら、一館や一町村だけの指定管理者でなく、複数館を管理するような会社を選定すると、さまざまなことが可能になる。例えば、一館の学芸員が練り上げて作った特別展を、離れたいくつかの館で巡回展示する。これはコストが下げられ集客は上がるだろう。また近隣のいくつかの館を管理するのであれば、学芸員を大規模館に集中させ、いくつもの特別展を企画させ、これらを連携した期間設定で展示し、巡回バスで繋ぐことも出来るだろう。旅行代理店と連携して複数館を見て回るパックツアーもつくれるだろう。
 温泉ホテルなどと組んだ企画も出来る。温泉につかるのに飽きた客にホテルから博物館へ行く巡回バスが出ていて、浴衣でもOKとすれば良い。もちろん5時閉館では出来ない。臨機応変に開館時間を変えなくてはならないだろう。
 集客する手段は民間ならいろいろと考えるだろう。今でもいくつかの館の連携は可能だろうが、行政体が異なると難しいのが現状ではないだろうか。こうした点を打破できる可能性を指定管理者制度は持っているのも確かであろう。
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by north-archaeo | 2005-07-04 19:42 | 大学教育
 そもそも博物館の運営は指定管理者制度に向いているのだろうか?長崎県立美術館では設置の始めから指定管理者制度による株式会社の運営である。その会社は博物館制作会社であり、これまで多くの博物館の計画設計施工に関わってきた。そこが運営も行うわけである。

 しかしそうした博物館と指定管理会社の蜜月状態は、どこの館でも可能なのだろうか?

 調査研究、そして学芸員という専門職の仕事内容からして、民間に何もかも運営させていいのだろうか。僕には理解できない。一日も早く、失敗して、この制度は博物館への適用には無理がある、という結論が出る日が来るのを待ちたい。
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by north-archaeo | 2005-07-02 18:42 | 大学教育
 木曜日の北海道博物館大会では指定管理者制度をめぐる講演とシンポジウムが開催された。道の指定管理者制度の推進担当者の講演で、この制度の目的や実施形態などが説明された。各種の公設の施設の運営を民間に委託するための制度であり、体育施設などはこの制度に適しているだろう。道立の博物館も指定管理者制度を導入することが説明され、その実施形態=学芸員のみ道職員、館長を含む他の職員は指定管理者となった会社(団体)が担う=についても話があった。すなわち道立博物館では学芸員だけが公務員で、館長などほかの部門はすべて民間の会社か団体が担うということだ。市町村立の博物館については、各自治体で決定するので、学芸員も含め、全面的に指定管理者に委託することもあり得るという。

 この話を聞いて、公立学校の校長に民間出身者を導入することにして、銀行の支店長だった人が校長になり、教員と教育委員会の板ばさみで、自殺したことを思い出した。学芸員と館長の間の対立や、無理解があると、こうした事態にならないとも限らないのではと心配になってしまった。学芸員教育を担う立場として、民間会社の館長との対立の問題、または民間会社所属の学芸員の立場の問題など、考え込んでしまった。学芸員として正しいと思うことを、会社員という立場で貫き通せるのだろうか?利益を追求する会社と、学芸員という立場は両立するのだろうか。倫理問題を含む新たな課題が浮かび上がってきそうだ。学芸員が孤立しないか、周囲から浮き上がらないか、これからますます難しくなるのではないだろうか。

 また指定管理者の選定について問題があるだろうと感じた。つまり誰が立候補した会社が博物館の指定管理者にふさわしいか、判断するのだろう。議会は適切な会社を選定できるのか、より低い価格で運営できる、と主張する会社を選んでしまわないだろうか。そしてそれは地域住民にとって良いことなのだろうか。第三者評価機関があれば、そこに適正な事業計画なのか、適正な管理経費なのか、判断させることもできよう。北海道博物館協会がそうした第三者評価機関になることは不可能なのかな、と以前から考えていた。指定管理者の選定にあたって、地域で有識者による選定委員会を設け選考するとか、道博物館協会に委託して業者の事業計画やその会社の適切性を評価するとか、何らかの方策は採れないのだろうか、と思った。

 もちろん民間活力導入や無駄な経費の削減は必要ではあるが、地域住民の生涯学習支援や、文化の保存・保護、調査研究といった利潤追求と相容れない博物館の目的は、株式会社が指定管理者となっても保障されるのだろうか。単なる展示施設に堕落してしまわないのだろうか。人さえ入場すればいいのだろうか。緊急に解決すべき問題がたくさん残されているように感じた。

 壮大な愚かな実験をしていることにならないと良いのだが。シンポジウムを聞いていて不安ばかりが増した。
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by north-archaeo | 2005-07-02 18:15 | 大学教育
今日明日は上記大会が小樽で開催されている。今日はこのページでも以前話題にした指定管理者制度をめぐっての講演とシンポジウムだ。詳細は改めて報告するが、この問題に関する博物館関係者の危機感は深い。荒れた大会になるのか静かなまま終わるのか。お楽しみに。
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by north-archaeo | 2005-06-30 12:18 | 大学教育
今週末は2年生のコース学生恒例の道内博物館へのバス旅行だ。一昨年は旭川・網走。去年は江差・上ノ国・松前・函館・今金。今年は十勝・旭川だ。
札幌の学生はなかなか道内の地方都市を訪れない。東京ディズニーランドには行くが、帯広にはなかなか行かない。僕には不思議なのだが、札幌で育った子たちは「どうして網走や稚内や釧路になんか行くのですか?」と真顔で聞く。道内の地方都市にあまり関心がないのだ。東京や大阪の人たちが魅力を感じるものに、札幌育ちの子はあまり関心がないらしい。
だから毎年この旅行では地方へ連れ出すことにしている。北海道の魅力を少しでも感じてもらえたらなあ、というのもこの旅行の目的の一つである。
個性的な博物館を見て刺激を受けて欲しいし、何にでも関心を持つ態度が育てばなおいいのだが。
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by north-archaeo | 2005-06-07 19:56 | 大学教育
大学博物館は近年各大学にさまざまな形のものが設置されている。旧帝大にはかなり大規模な総合博物館が置かれ、長年にわたり収集されてきた学術資料の保存、展示と研究が行われている。博物館専任の教員も配置されている。膨大な学術資料が学部の改組や担当教員の転出などで倉庫に死蔵されているのはよくあることのようだ。大学博物館で整理保管し次世代にそうした資料を残していくことができる。独法化されたとはいえ、旧帝大こそ採算を度外視して学問の府として大学博物館の本領を発揮して欲しいものだ。地方自治体の博物館では指定管理者制度がいよいよ導入され、保管・整理・研究などの業務に不安の陰がさしている。国立大学の博物館が地域の博物館との連携を進めれば、その役割は大きい。
一方で私立大学の大学博物館は各大学の特色を活かしたり、機能を限定した博物館を置くことが多い。韓国では多くの大学に大学博物館が設置され、この面では日本より進んでいる。
本学の博物館は小規模だが教育博物館としてうまく機能している。学外の博物館に全面的に依存していた実習を学内でも実施できるようになり、継続的かつ計画的な博物館実習が可能となった。日常の運営を学生にゆだねたことで自主的な意識が芽生えたことも嬉しいかぎりだ。
ただ今後は予算的に厳しいとはいえ、研究面での充実も図らねばならない。所蔵資料の調査研究が手始めだろうが、展示法や展示技術の研究、博物館評価の研究なども課題だろう。
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by north-archaeo | 2005-05-21 09:42 | 大学教育
研究室の片付けを始めた。とにかく酷い状況なのだ。まあ2年間、忙しさを理由にほとんど片付けをしていないので、大学の教務関連の書類、入試広報関連の印刷物、献呈された旧石器以外の発掘調査報告書、などなどがあちこちにうずたかく堆積している。丁寧に発掘しないと何が埋まっているかも分からない。上層から取り除いていくと最下層から2002年くらいの書類が出土する。とにかく分類をしなければならないのだが、そのスペースもなく、悪戦苦闘中。研究室の床が全部見えるのはいつの日だろう。発掘計画を立てなければ。
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by north-archaeo | 2005-04-27 19:26 | 大学教育
大学の学科のHPをブログで立ち上げた。今日はその使い方の講習会があった。
僕の研究室のページも出来たので、少し記事を書いておいた。

表ページとこちらの裏ページで書き分けてもいいかな。どうやって使おうかなあ。
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by north-archaeo | 2005-03-29 19:06 | 大学教育
本学の卒業生がD東のある町の博物館施設に就職した。町の出資する公社が運営する博物館である。財政規模にもよるが、こうした公社、財団運営の博物館は増えている。そこに指定管理者制度だ。

都市部の大きな博物館や、県立博物館など、学芸員が十名以上いるような「メガ博物館」は別格として、一人学芸員の小さな博物館はどうなっていくのだろうか?特色を出しても、交通の便が悪く、周辺人口が自体が少なく、観光ルートからちょっとずれていたりすると、入館者は伸びない。小学校~高校の総合学習の時間での利用など、学校と博物館の連携事業で子供の入館者増と地域学習の拠点となることを狙う館もある。

しかし、国は地方の文化行政、地方文化の育成、生涯学習などについて、どう考えているのだろうか?財政再建はもちろん重要な課題であるが、だからといって博物館の意義を軽んじて良いはずはない。

博物館と市民の結びつきが重要であろう。おらがマチの博物館として住民から大事にされ、住民が支えている、住民と博物館との交流が密にある、そんな博物館なら指定管理者制度が出てきても、どこかの会社に指定管理者になってもらうということに住民の反対が出るだろう。

博物館学芸員は館と人とを結びつける重要な役目を担っている。ただ館に閉じこもり研究しているような学芸員の多い博物館は、住民や議会の理解が得られず、指定管理者制度の波に飲み込まれてしまう。

博物館はどこへ行くのだろう。
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by north-archaeo | 2005-03-28 14:35 | 大学教育
先にこのブログでも触れた博物館におけるデジタルアーカイブだが、既に岐阜女子大で動いている。昨年文科省の現代GPにも採択されたプログラムである。デジタルアーキビストなる資格まで動き出している。今月シンポジウムも開催されている。近い将来、博物館、図書館、教育現場でデジタルアーキビストとは必要とされると考えられている。岐阜女子大ではそのための科目群も設定しているようだ。

http://d-archivist.npo-dac.jp/
http://www.jdaa.gr.jp/info/m050216.html
http://dac.gijodai.ac.jp/gp-da/info/20050306.htm
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by north-archaeo | 2005-03-26 11:29 | 大学教育