協会での資格制度の発表

日本考古学協会の日曜日の口頭発表、第5会場での石川先生の「埋蔵文化財発掘調査資格をめぐって」を聴いた。14時15分からの発表であったが時間前にほぼ満席。定刻にはベランダにも壁際にも立ち見の聴衆があふれ、座席は完全に埋まった。日本文化財保護協会の戸田先生も早稲田大の高橋先生も着席していた。




石川先生の発表は日本文化財保護協会の埋蔵文化財調査士資格、早稲田大学の考古調査士資格という2つの資格制度の目的や取得条件、試験や必要単位数などそれぞれの概要についてパワーポイントで極めて分かりやすくまとめ説明してくれた。その上で埋蔵文化財調査士資格制度には資格認定に対して第三者的チェック組織が欠けており、それが必要であることを指摘していた。考古調査士資格に対しては学部で資格取得できるため「資格取得自体が目的となり「考古学」が空洞化」しないかという危惧が表明され、考古学志望者の減少への歯止めにはなるかもしれないが、学生が身につけるべき力は何かを議論するのが先であり、文化財の保護活用が出来る人材の育成こそが現在の課題である、として個人的見解としながらも、この資格制度への反対を表明した。
石川先生が司会役となり会場からの意見を募り、戸田先生、高橋先生にも発言が振られ補足説明がなされた。
あっという間に終了時間の14時55分が来てしまい、引き続き隣の教室の場所を移し、そこでさらに45分ほど延長して、石川先生が再度簡単に発表を要約し、質疑が続けられた。
高知県の埋蔵文化財関係者、東京都のO田氏、兵庫県の埋蔵文化財関係者などから次々と意見が表明されたが、すべて資格制度に批判的な意見であった。石川先生は資格への賛意を示す意見がないか会場に呼びかけ、ようやく千葉県のO氏がそもそもこうした問題について研究発表の場で協会側(石川先生は協会の研究環境検討委員会として発表)が発表してそこで意見聴取のようなことをするのはおかしい、本来なら総会の場で議論すべき、もしくは各地で協会が議論の場を持ち多くの意見を聞くべきではないか、と疑念を表明し、協会は資格制度について検討してこなかったのに、別の組織が資格制度をはじめると批判するのはおかしいのではないか、と発言した。石川先生は、協会は何もしてこなかった訳でなく以前に資格制度については検討し、導入しないと決まったという経緯があると説明した。
民間発掘会社(元東京都職員)のH氏は業務への入札などで発掘担当者の経歴などを書かされるが、それが自治体によってあまりにまちまちであることなどから資格制度の必要性を述べられた。
会場が満席だったことを含め、資格制度への協会員の関心が高かったことは間違いない。ただ各地の埋蔵文化財行政のベテランが次々と資格反対の意見を表明する中で、石川先生がいくら若い人も意見を!と呼びかけても、自分の採用に係るかもしれない人達を相手にあの場で資格への賛成を表明する「若い人」はいなかっただろう。
議論を聞いていて反対意見は「今」と「過去」しか見ていないように思えた。10年後、20年後、埋蔵文化財の調査やその保護・活用はどうなっているのだろう。そのときには資格の取得要件はたぶん変わっていることだろう。学芸員資格も必修10単位で取得できた。今年それが増えそうな状況だが、それが時代の状況に即した改訂ということだ。
二つの資格制度が開始されたことで、議論が沸き起こっている。両組織とも批判を承知の上で制度を立ち上げたのだと思う。二つの資格制度が完成されたものでこれで十分だ、とは言わないが、まずは将来を見据えて制度を始めたことを讃え応援したい。制度は変えていけばいいのだ。将来、考古学の資格が社会的にも認知され、埋蔵文化財担当者が専門職として行政の中でも地域社会でも今よりも尊重され、担当者の地位向上につながれば良いと思う。
石川先生は発表の中で「臨床心理士」資格のようになっては問題だ、と発言していたが、私は国家資格でもないのに資格認定協会があれほど力を持っている状況を羨ましくさえ思う。大学に対して大きな力を持っているのだ。資格認定協会が大学のカウンセリング施設や授業・臨床実習の履行状態までチェックする。大学への実地調査まである。将来、考古学の資格はどこまで行くのだろうか期待を持ちたいと思う。
[PR]
by north-archaeo | 2008-05-29 23:35 | 考古学