『埋蔵文化財保護行政の規範的検討』 日本文化政策学会発表

京都橘大学の金武 創氏による「埋蔵文化財保護行政の規範的検討」と題した研究発表が日本文化政策学会分科会3「文化政策と法・制度」というセッションで行われた。金武氏はこれまでも「文化財政策の財政問題:社会評価アプローチと公共選択アプローチ」(文化経済学第4巻第4号)、「文化遺産観光のストックとフロー 三内丸山遺跡を事例として」(京都橘大学研究紀要 第33号)など埋蔵文化財関連の論文を著しているそうだ(未読、勉強不足と反省)。行財政改革の流れのなかで遺跡発掘への市場原理導入が進められつつある中で、「第一に埋蔵文化財保護の社会的便益を真剣に吟味」(配布資料)すべきであり、「文化政策における消費者選択重視の視点に注目」(同)したいと説く。



そのうえで埋蔵文化財に対する公共的意思決定に関する議論(公共選択アプローチ)、埋蔵文化財から派生する正の外部性に冠する議論(外部性アプローチ)、行政による個人選好への干渉・強制に関する議論(価値財アプローチ)の3視点から論じていた。文化政策学、文化経済学的な用語法が多く難しかった。要は埋蔵文化財の調査者については公共選択論からいえば、誰が調査するとどんな社会的便益を人々は受けられるかという点から誰(公益法人か非営利組織か民間企業か)がその公共サービスを担うべきか選択されるという。次に人々は埋蔵文化財の価値について真に理解しているかという問題であり、それは現在の人々にとっての価値だけでなく将来の人々にとっての価値をも含むものであり、文化財の活用という方向性と学術的価値という方向性の2つの方向性があるという。さらに地域住民が埋蔵文化財の考古学的価値を認識していないなら原因者負担制度に基づく緊急調査は義務教育や学校給食と同様に価値財の範疇にあり、政府による消費選好の強制であるという。つまり原因者負担制度によって文化財は価値があるのだという価値観を押し付けてきたが、それを住民はどう思っているか、という意味のようだ。そしてそうした強制は正の外部性を生み出さなければならない、という。正の外部性とはスロスビーによれば、希少な文化財自体から生じる存在価値、将来的にその文化財を利用するもしくは文化財の二次情報に触れる余地を残すという選択価値、次世代が利用する可能性を残す遺贈価値、教育的価値、威光価値などである(配布資料)。
 「緊急発掘調査の成果に対する人びとの選好(価値基準)がこの40年間で実際どのように変化したのか、あるいはしなかったのかという消費者の学習問題である」(配布資料)という。

あ~難しい。ボクの理解では金武氏が言いたいのは、かながわ考古学財団問題でも関係者は県民を置き去りにした議論をしていないか?という問題提起のようです。県が行政として果たすべき「責任」を指摘するだけでなく、県民が享受している「正の外部性」について訴えることで、県民を巻き込んでの財団必要性の議論が出来るのではないか、ということのようです(たぶん)。
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by north-archaeo | 2007-12-04 19:49 | 考古学