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三浦氏の著作

最近、三浦展氏の著作をよく読む。三浦氏は昨年ベストセラーとなった『下流社会』(光文社新書)の著者だが、格差社会を主として統計やインタビューから書く他の論者と異なり消費の視点から捉えていて興味深い。物質文化の消費問題から社会階層に迫るという点に、考古学と近いものを感じるのかもしれない。物質文化消費傾向・嗜好が社会階層によって文化資本という形で世代を越えて継承されるという点に、ブルデューの『ディスタンクシオン』(藤原書店)との類似性を感じた。





彼のファスト風土論(『ファスト風土化する日本』洋泉社新書y、『下流同盟ー格差社会とファスト風土』朝日新書)も面白く読んだ。日本中均質な巨大ショッピングモールの進出が、地方の中心市街地商店街の崩壊を招き、コミュニティーを破壊し凶悪犯罪の増加につながるとしている。一つの流通小売業態が地域社会やコミュニティーを崩壊させる。そしてフランチャイズ店舗やショッピングモールばかりの均一な景観が日本全国に広がっていく。便利さと安価を無邪気に求めた小売業態が、地方社会を蝕んだという恐ろしさ。スーパーマーケットチェーンのウォルマートが引き起こした社会状況をアメリカで取材した部分も面白く読んだ。社会の崩壊など全く意図しない何らかの制度やシステムが、コミュニティーや地域社会のひとつの平衡状態を壊し、新たな別の状態へ移行させてしまう。そして景観の変貌が下流階層を生む一要因、との三浦氏の指摘は、多くの社会学者の格差社会論より説得力があるように思えた。
by north-archaeo | 2007-01-04 16:42 | 考古学