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岩宿からのメール

岩宿博物館のK菅氏からメールを頂戴した。このブログの11月6日『捏造発覚から6年の岩宿フォーラム』という記事へコメントしたけど長すぎでコメント欄に拒否されたらしい。本人に転載許可ももらったので、以下に載せた。
K菅氏からのメールは嬉しかった。ブログにボクは書きたいことを書いたので反論を待っていた。会場でも石器を見ながら言いたいことを言ったけれど、同じ石器を見ながら議論し、思ったことは言ったり書いたりすること、黙殺しないこと、そしてそれを感情的にならずに応酬したいと願っている。それが捏造事件の教訓だとボクは信じたい。K菅氏もそう思っているようだ。意見は違って当たり前。その議論を楽しみたい。





以下 K菅氏からのメール
 ブログに書きこもうとしたところ。99字で拒否されましたので、あのようなコメントになり失礼いたしました。その際、打ったものを多少手直ししてお送りいたしますので、ご一読いただければ幸いです。
私自身は、X層段階は現生人類の時代ですので、石器群は単純ではないと考えています。ブロンボスを持ってくるまでもないと思いますが、、、
捏造石器を痛烈に批判したO氏についても、Ia亜期の考え方の根本に単純なものあるいは判らないものを、古いとあるいは前の時代と考えたのではないでしょうか。そうした憶測が捏造事件を含めた中期・前期旧石器時代の考え方の根底にあるのは事実であると考えています。「Ia亜期」の考え方自体は、捏造以前のことですが、そのようなより古い時代に関するO 氏の期待があったことも事実でありましょう。またそれにも増して、捏造石器が全盛のころ、それらを必死に捏造であった「中・前期旧石器」に結び付けようとしていた多くの研究者がいたことは長崎様もよくご存知のことではないでしょうか。そのあたりは、我々を含めた直接捏造に関与しなかったと安穏としている研究者のそうした考え方自体を、捏造事件と同じように、まず冷静に清算すべきではないでしょうか。

本当に「移行期」があって、漸移的に石器群が変化するのでしょうか。その変化のありかたすら、漸移的であるのか、劇的に変化したのか、まったく不明なのに、極東に位置する日本が、ヨーロッパや中東と同じように変化するのでしょうか。
それを考える前に、まず目の前にある資料を偏見なく見ることではないでしょうか。鈴木さんをはじめ、なぜ多くの研究者が、同じ層位から出たものを別の文化として殊更に区分するのでしょうか。
あのなかでは、島立氏が「その様な(チャート製の)石器群は、どの時期にもあることでは」といったコメントが最も痛撃であったと考えています。どこにでもあるものは、時期区分や時代判定の基準にはなりにくいのです。

我々Ⅹ層研究会の考えるところは、中期旧石器時代の内容が不明であればなおさら、年代的に逆戻りしても、確実な部分を客観的に掌握しなければならないという部分です。確実な部分をより明確にすることで、今後を切り開くためのベースを作ることに今回のシンポジウムの目的があります。もう、数十万年も逆戻りしたのですから、それくらい遡っても遅くはないはずです。そこを、確認しておきたかった。その意味で、真新しい石器群の紹介に重点はなかったのです。
後期旧石器時代が何であるかは、それぞれの研究者でその考え方が違うでしょう。しかし、今チャートの一群のみを分離して取り上げて、それをあたかも不明であるはずの前時代の残影とするのはどうでしょうか。今回確認したことは、「最古」を掲げながら時代や年代としては後退していますが、今はこの部分までしか確実にいえないのだということです。このような意味で、石器群の背景や時代観念を確認するため、あえて「後期旧石器時代段階ですか」と聞いたつもりです。
個人的な意見としては、「後期旧石器時代段階」は、ホモサピエンスの時代です。最初に言ったとおり、相当複雑な石器作りやその構造があってよいと考えています。私自身の考え方のなかにもやはり巣食っているのですが、後期旧石器時代段階を考える上で、単純なものから複雑にといった単純な「発展段階論」はそろそろ卒業したいと考えているところです。
形のないⅩ層研究会では、捏造後どのように研究を進めていくのか、決して深く突き詰めて議論を交わしたことはないかもしれません。しかし、少なくとも、Ⅹ層研究会に集まった研究者は、捏造を容認してきた側の研究者として、捏造事件をどのように自分のなかで解決するのか、真剣に悩んできたつもりです。長崎様ほどではないですが、、、
今回のシンポジウムで必ずしもその問題を解決できたわけでもありません。表には出しませんでしたが、捏造事件のひとつの解決のあり方を考えてきたつもりです。こうした議論を続けることが、真の意味で、捏造事件後の研究を発展させることになるのであれば、我々の活動の目的が達せられていると考えています。

ブログのコメントで出発した文章ですので、思ったところを書き連ねただけで、内容をうまく言い表せていないかもしれません。また、失礼な部分があるかもしれませんが、何卒ご容赦ください。
by north-archaeo | 2006-11-10 18:43 | 旧石器