指定管理者制度の博物館への適用

 木曜日の北海道博物館大会では指定管理者制度をめぐる講演とシンポジウムが開催された。道の指定管理者制度の推進担当者の講演で、この制度の目的や実施形態などが説明された。各種の公設の施設の運営を民間に委託するための制度であり、体育施設などはこの制度に適しているだろう。道立の博物館も指定管理者制度を導入することが説明され、その実施形態=学芸員のみ道職員、館長を含む他の職員は指定管理者となった会社(団体)が担う=についても話があった。すなわち道立博物館では学芸員だけが公務員で、館長などほかの部門はすべて民間の会社か団体が担うということだ。市町村立の博物館については、各自治体で決定するので、学芸員も含め、全面的に指定管理者に委託することもあり得るという。

 この話を聞いて、公立学校の校長に民間出身者を導入することにして、銀行の支店長だった人が校長になり、教員と教育委員会の板ばさみで、自殺したことを思い出した。学芸員と館長の間の対立や、無理解があると、こうした事態にならないとも限らないのではと心配になってしまった。学芸員教育を担う立場として、民間会社の館長との対立の問題、または民間会社所属の学芸員の立場の問題など、考え込んでしまった。学芸員として正しいと思うことを、会社員という立場で貫き通せるのだろうか?利益を追求する会社と、学芸員という立場は両立するのだろうか。倫理問題を含む新たな課題が浮かび上がってきそうだ。学芸員が孤立しないか、周囲から浮き上がらないか、これからますます難しくなるのではないだろうか。

 また指定管理者の選定について問題があるだろうと感じた。つまり誰が立候補した会社が博物館の指定管理者にふさわしいか、判断するのだろう。議会は適切な会社を選定できるのか、より低い価格で運営できる、と主張する会社を選んでしまわないだろうか。そしてそれは地域住民にとって良いことなのだろうか。第三者評価機関があれば、そこに適正な事業計画なのか、適正な管理経費なのか、判断させることもできよう。北海道博物館協会がそうした第三者評価機関になることは不可能なのかな、と以前から考えていた。指定管理者の選定にあたって、地域で有識者による選定委員会を設け選考するとか、道博物館協会に委託して業者の事業計画やその会社の適切性を評価するとか、何らかの方策は採れないのだろうか、と思った。

 もちろん民間活力導入や無駄な経費の削減は必要ではあるが、地域住民の生涯学習支援や、文化の保存・保護、調査研究といった利潤追求と相容れない博物館の目的は、株式会社が指定管理者となっても保障されるのだろうか。単なる展示施設に堕落してしまわないのだろうか。人さえ入場すればいいのだろうか。緊急に解決すべき問題がたくさん残されているように感じた。

 壮大な愚かな実験をしていることにならないと良いのだが。シンポジウムを聞いていて不安ばかりが増した。
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by north-archaeo | 2005-07-02 18:15 | 大学教育