あれから10年

毎日新聞の捏造スクープから10年が経ちました。真夜中に宮城のK田さんから電話があり、朝刊でスクープが出ること、ビデオを見せられ捏造は疑いが無いことを知らされ、床が抜けるような、どこまでも落ちていくような感覚を持ったことを思い出します。




謝罪会見から総進不動坂検証報告書の刊行まで、多くの研究者の協力を得て自分なりに事態に向き合ってきたつもりですが、たくさんの反省もあります。ほとんどの方にご恩を返せないままでいることを心苦しく思っています。

今週2つの授業で捏造事件について話をしました。毎年この時期にはこのテーマで話をします。学生達は当時小学生。現在考古学を志す学生もいますし、単に一科目として聴いている学生もいます。皆普段より熱心に聞いてくれます。自己弁護的でなく事件について語ることはなかなか難しいのですが、前期旧石器存否論争から捏造発覚、その後の検証まで解説し、自分の調査で「失敗学」的な説明を試みています。
そんな授業の最後にはいつもマスコミと考古学の距離の取り方について話をします。遺跡についてわかり易く語りすぎないこと、どこまでが事実でどこからが解釈か、また解釈の基準や別見解についても紹介すべきこと、マスコミはこちらの意図と違ってセンセーショナルに報道しがちなので慎重に説明すること、など調査担当者として注意すべき点について話します。
長野県の竹佐中原遺跡の調査方法や議論の進め方は、捏造事件後の古い時期の遺跡調査のひとつの基準になると解説する一方で、今年は残念なこととして出雲のイベントを取り上げました。諏訪間ブログで先月末の出雲での砂原イベントを知って暗澹たる気持ちになりました。学会での議論が尽くされていないのに、遺跡の評価が固まっていないのに、もう地域振興イベント。
10年目のこんな出来事が残念でなりません。安易な地域振興に考古学が取り込まれる危険性について認識することは、事件の教訓のひとつだったと思っていたのに。
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by north-archaeo | 2010-11-05 21:58 | 捏造事件