デジタル写真実測

考古遺物の実測はなかなかに時間がかかる。特に石器は実測図が描けるようになるまでかなりのトレーニング期間を要する。これは図自体のとり方に習熟する必要があることと、石器の製作技術や剥離面の観察ができるようになるまでリングなどが描けないこと、この二つが理由だろう。埋蔵文化財センターなどでは一年中実測を専属でやる写図工さんがいる。一日1点の石器実測が出来れば、年間で一人200点以上は実測できるわけだ。こうした写図工さんが何人もいるのだから羨ましい。

大学で旧石器の報告書を出そうとすると、学生は実測が出来るようになるまで1~2年掛かってしまい、やっと実測が出来るようになった頃には卒業してしまう。また1日1枚ペースでは描けない。学生には他にもやるべきことが多いから。

石器実測で一番時間がかかるのは、外形線と稜線の実測だ。リングやフィッシャーはフリーハンドで描くのでそれほど時間を要しない。従来から写真をトレースするという写真実測の手法が利用されてきた。しかし撮影距離が近いと石器周縁部での誤差が大きくなるため、正確に実測するためには望遠レンズで距離を離して写真撮影しなければならない。

デジタルカメラで撮影すれば、パソコン画面でイラストレーターなどのソフトを用いてトレースできる。画面上で実物の数倍に拡大してトレースできるので、小さい石器なら従来の方法よりも精確かもしれない。マウスではうまくトレースできないが、パレットツールを使えば、操作性も問題ない。外形線、稜線をこうしてトレースし、あとは別レイヤーでリング、フィッシャーを描き込めばよい。線の太さを指定してやればいいから、ロットリングでのトレースも必要ないかもしれない。
プリンタで打ち出した実測図が出版に使えるレベルかは不明だが、試してみる価値はあるだろう。こうした実測を既に実践している自治体もあり、近く視察に行くつもりだ。

まあフルオートで実測できるわけではないから時間を短縮するだけだが、3次元デジタイザを用いても結局どこに線を引くかは実測者が判断しなくてはならないので、同じだろう。

さあて、学生さんたちは興味を持って取り組んでくれるかなあ。
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by north-archaeo | 2005-03-26 11:02 | 旧石器