埋蔵文化財の資格制度シンポジウム その2

(前の記事のつづき)
 まず①の資格のメリット、その後の職は?との問いに、高橋氏は「将来資格を持った人が民間の調査会社や行政に入っていくことを考えている。10年、15年経つと資格を持った人が増えていくだろう。埋蔵文化財調査の社会的透明性を訴える意味でも資格は有効と考えている」と答え、戸田氏からは「民間会社では給与などの面で有資格者を遇するように日本文化財保護協会に加盟各社にお願いしている。また行政から調査担当者の経歴を書くことが求められるので、資格が標準を示すことが出来るのではないか」といった主旨の回答が成された。禰宜田氏からは「現在の採用状況は厳しいが、各組織が世代替わりするときに、その選考に資格が使われるようになれば、と考えている」という発言があった。
 ②の日本文化財保護協会に向けての質問には、戸田氏が「各会社に資格取得者を優先的に採用してくれ、優遇してくれ、とお願いしている。調査の全体量が減っても調査員は必要とされるはずだ。また当協会の資格には行政OBの枠(20年以上の経験)もあるので、そちらも増えていくと考えている」と回答した。
 ③の質問にはやはり戸田氏が答えて「まだ各会社の業績評価・調査担当者評価に際し、日本文化財保護協会の資格を書き込むことを求められたことはない。当協会が資格制度を考える過程で埋蔵文化財調査士(自然科学)とか埋蔵文化財調査士(建築)などの資格を検討したことがある」と発言した。

 



 これらの質疑の後、司会の辻氏が会場にむけ、資格制度は必要かどうか、どのような資格なら良いのか、日本考古学協会はどう対応したらよいと思うか、などについてご意見を!と求めた。これに応じてさまざまな意見、質問が出た(私の能力不足で以下の要約が発言意図と違っていたら、ほんとにゴメンナサイ)。

 ●文化庁の資格は調査水準の維持・向上が目的とされるが、果たしてそれを満たせるのか?またさまざまな文化財の中で埋蔵文化財だけを取り出して資格を作ることに法的な根拠はあるのか?文化財行政全体の中でそれは位置づけられるのか?
 ●発掘を届出制から許可制にするならば、資格制度は必要だろう。許可制にすることを埋文委はどう考えているのか?【近藤氏の回答:直ちには答えられない。埋文委でも発掘の許可制についてはこれまでも議論はしてきた。】
 ●資格制度は必要である。埋蔵文化財は公共物であり取り扱いには一定の能力が必要。今まで無かったのが不思議だ。資格認定ですでに先行している組織は他の意見を聞きながら進めていって欲しい。
 ●資格制度には反対。基本的に「発掘」だけの資格なので反対である。発掘中に民間会社が倒産し出土位置データが分からなくなり、支払いが既に終わっていてデータも出してもらえないような事例がある。発掘だけでなく、埋蔵文化財の保存・活用まで含めた資格でないと意味が無い。
 ●組織自体の調査実績のチェックが必要なのではないか?民間は経営上の問題も抱えているし、個人の資質だけをチェックするのでは足りないだろう。【禰宜田氏の回答:文化庁では組織のあり方についてはこれまでも検討してきたし、民間での調査についても基準を作ってきた。最後に残してきたのが個人の資格である。資格制度を作ったから良い(終わり)、ということでなく、どう運用していくかが大事である。】
 ●資格制度を作り個人の資格を問う前に、調査組織のチェックの仕組みを作るべきだ。
 ●資格の停止、剥奪について早稲田大学と日本文化財保護協会はどう考えているか?【高橋氏の回答:資格認定機構の中に倫理憲章があり、具体的にそうした場合には検討されることになる。】【戸田氏の回答:日本文化財保護協会には倫理綱領があり、倫理委員会も置かれているが、まだ処分事例は無い。】
 ●大学として考古調査士資格の制度に参加することにした。大学における考古学教育をどうするかを考えて参加した。大学を卒業してすぐに全部出来るなんてことは有り得ないが、考古学に関わりたいと思う学生がいるのだ。学生達の学習の動機づけとしても資格は必要である。
 ●昔は日本考古学協会員になれば発掘が出来た。調査担当者の採用で学芸員資格を重視したこともある。2つの資格があるのは問題だ。どちらもがやっていって良い方向に進めばいいのだが。
 ●資格はあった方がいいが、大学で考古学を学んだ証しだけで資格を出すのはだめだ。大学で学ぶことは文化財についてのしっかりした考え方であって、それがあれば行政に勤めてもやっていける。そのうえで実技が最低限出来て調査に関わった経験があって、ということで資格を出していけばよいのでは。
 ●早稲田大学のキャリアコースを受講している者だ。自分は全く知識が無かったが、炭素年代測定やら様々な編年やら、測量などもやっている。内容的には発掘中心ではなく、文化財行政についての内容が半分くらいはある。行政から見た埋蔵文化財についてのことが多い。大変有効なプログラムと思っている。
 ●今日の議論を聞いていて安心した部分があった。日本考古学協会は自由な学問の場であることが確認できた。文化庁の資格は考古学専攻でないとダメだとなってしまうのか?様々な分野から発掘調査に参入することができたこれまでの考古学界の経緯を大事にしてほしい。資格がないと発掘できない、とはならない様に日本考古学協会は努めてほしい。
 ●こうした資格制度の中に入らないのが、日本考古学協会の立ち位置だ。学会として自由な学問の場であるべきだ。
 ●日本考古学協会としてはこれらの資格についてどうこう言う立場にないだろう。資格は必要ないと思う。行政は職務権限で調査を差し止めることも可能だからだ。
 ●資格についてだけ議論するのでなく、埋蔵文化財行政のあり方を含めて議論すべきだ。学生、不安定雇用の調査員などからの率直な意見を汲み取る場として、日本考古学協会があればよい。

 
[PR]
by north-archaeo | 2009-06-03 18:29 | 考古学