埋蔵文化財の資格制度シンポジウム

 日本考古学協会が5月30日、31日に早稲田大学で開催された。研究発表の第5会場では14時~17時30分に協会の研究環境検討委員会の主催で「シンポジウム 埋蔵文化財の資格制度を考える」と題して5名の発表があり、その後会場からの質問、意見を受け、発表者が答えるという形でシンポジウムが行われた。
 



まず研究環境検討委員会を代表し、辻氏が趣旨説明と資格制度問題の経緯について話をされ、昨年の協会での資格問題でのI先生の発表への会員の非常に強い関心、資格制度を打ち出した組織からの十分な説明の時間が取れなかったことを受けて、今回のシンポジウムが企画されたと説明した。また今回のシンポジウムは資格に関しての様々な意見を出し合うことに意義があり、どうあるべきという結論を求める会ではないとの方向付けが辻氏から成された。会場には自由記述式のアンケートが配布され、会員非会員を問わず、記入が求めらた。そこには埋蔵文化財調査に資格制度が必要か、どのような資格であれば良いのか、日本考古学協会はこの資格制度にどう対応すべきか、という質問が並んでいた。
 最も早く資格制度を実施している日本文化財保護協会の戸田氏が次に登壇した。戸田氏は同協会の埋蔵文化財調査士・調査士補の資格制度の制定経緯、目的、両資格の取得者が既に300名を超えることなどを説明した。また資格の更新講習や継続教育(CPD)について説明があり、継続教育ではポイント制を導入し、日本考古学協会での研究発表、聴講、地方学会の聴講などをポイントとして加算する形で行う予定であると構想を語った。またすでに調査歴20年以上の者には特別枠での資格授与を行うことも併せて紹介していた。
 3人目に登壇したのは早稲田大学の高橋氏で、文科省委託事業である「社会人学び直しニーズ対応教育推進プログラム」に採択された考古調査士養成プログラムについて、その目的、趣旨、資格の種類、コース設計とカリキュラム編成などを説明した。埋蔵文化財調査に対する社会への説明責任、調査担当者の地位向上や周知化などを挙げていたのが印象的であった。
 4人目は日本考古学協会の埋蔵文化財保護対策委員会を代表して近藤氏が登壇。「学問研究に資格など必要ない」という強い主張が印象的だった。また埋蔵文化財の取り扱いのうち「発掘」だけに特化した資格について懐疑的で、本来、埋蔵文化財の調査から維持・管理、保存・活用までを一連のものとして扱う必要があるはずだ、と述べていた。また文化庁資料で埋蔵文化財調査での20代の占める割合が3%であることを示し(50代29%、40代38%、30代30%)、資格取得してもそれを活かす場がないのではないか、と述べた。
 最後は文化庁の禰宜田氏で、さきごろ公開された「埋蔵文化財保護行政における資格のありかた(中間まとめ)」の概要について説明する、と始めに宣言され、今回はこれを踏み越える発言はしないという慎重な姿勢が示された。調査担当者の資格としては発掘技術から報告まで担当できる学術的能力と工程管理者としての能力の両方が必要であり、大学などでの講義と実務経験を併せて資格制度とすると、文化庁の打ち出す資格の方針が表明された。また埋蔵文化財についての理解の裾野を広げる資格があってもよいのではないか、との意見も述べたのが印象的だった。
 
 この後、辻氏のみが司会として登壇し、会場から挙手での質問・意見を求めたり辻氏が指名したりし、これに発表者が登壇して答える、という形で意見交換が進められた。
 まずは会場からの事実確認質問として、以下のような質問が会場から出た。
 ①資格を取るメリットはあるのか?その後の職はどうなのか?
 ②日本文化財保護協会の資格について、今後も協会加盟会社の中で資格をとる若い人が続々いるのか?雇用創出につながるのか?資格を持たないと仕事が取れないという事態になるのか?
 ③日本文化財保護協会に対しての質問で、資格のバリエーションを増やすつもりはあるんか?また行政から評価にあたって実際に資格を書き込むことを要請されたことはあるのか?
 
つづく

(すみません。今日は長くなったので、この辺でやめます)

 
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by north-archaeo | 2009-06-01 17:16 | 考古学